相場が上がっているとき、多くの人は業績や景気といったファンダメンタルズに理由を求めます。しかし宮島秀直氏が日本株の局面を読むときにまず見るのは、「誰が、どれだけのレバレッジで、いつまでポジションを持つのか」という需給の構造です。

2026年5月15日開催の投資戦略ゼミ月例レポート解説セミナーでは、ヘッジファンドの投資スタンスを数値で読み解き、6月末決算に向けた売り圧力を先読みする視点が語られました。

ヘッジファンドの強気・弱気は「レバレッジ」でわかる

宮島氏が重視するのは、ヘッジファンドリサーチが日次で集計するレバレッジ比率です。これは、大手ヘッジファンドが自己資金に対してどれだけ膨らませたポジションを持っているかを示す指標で、強気か弱気かが一目でわかります。

宮島氏はこれを人間の血圧にたとえます。中東情勢の緊張で日本株のロングポジションが一気に膨らんだ局面は、比率が高すぎる「危険な高血圧」の状態でした。その後、米軍の動きや戦闘激化を受けてポジションが縮小し、停戦観測が出た3月下旬から再びじわじわと積み上がってきた――という流れを、レバレッジの推移として読み解いていきます。

セミナー時点では、比率は平常時いっぱいの水準まで戻っていました。ここからさらに買い上がるのは危険だと多くのファンドが感じ始める、微妙な水準だという読みです。

需給を左右する「45日ルール」

宮島氏が繰り返し強調するのが、ヘッジファンドの「45日ルール」です。これは、投資家がファンドを解約する際、決算日の45日前までに通知しなければならないという慣行を指します。

6月末が決算の締め切りなら、その45日前――つまり5月中旬が、顧客からの解約通知の最終局面にあたります。日本株を底値から買って大きく儲けたファンドは、顧客に資金を返すために持ち株を売ってキャッシュを作らざるを得ません。

つまり、業績が悪化したわけでも悪材料が出たわけでもないのに、カレンダー上の理由だけで売りが出る局面がある。宮島氏は「このあたりから、ヘッジファンドはキャッシュを作るために日本株を売り始める」と、需給面の転換点を具体的な日付で示しました。

クオンツ型とロングショート型が同じ戦略を取った

今回の日本株上昇では、クオンツ型ヘッジファンドとロングショート型ヘッジファンドが、いずれも「ポータブルアルファ」という同じ戦略を採用していました。自分たちが選んだ精鋭銘柄をロングし、その一方で日経平均やTOPIXをショートする手法です。

両者が好んだ銘柄は、ディスコ、アドバンテスト、東京エレクトロン、レーザーテック、ソフトバンク、キオクシアなど。これらは日経平均への指数寄与度ランキングで上位を独占する顔ぶれです。少数の値がさ株が集中的に買われれば、多くの銘柄が下がっていても指数だけは上昇する。指数の強さと市場全体の強さがずれる背景には、こうした需給の偏りがあります。

為替介入は「アメリカの参加」で威力が変わる

セミナーでは、ゴールデンウィーク前後に実施された為替介入についても踏み込んだ解説がありました。宮島氏によれば、複数回に分けて総額で約10兆円規模の介入が行われたといいます。

とりわけ市場を身構えさせたのは、日本単独ではなくアメリカのFRBが委託を受けて協力した局面でした。日銀単独の介入では動きが鈍かった円相場が、FRBの参加が伝わった局面では一気に円高へ振れたのです。「日銀がやっている」という程度の情報と、「FRBが動いている」という情報とでは、市場に響く音量がまるで違う――宮島氏はそう表現しました。

この記事のまとめ

  • ヘッジファンドの強気・弱気は、レバレッジ比率を「相場の血圧」として読む。
  • 「45日ルール」により、決算の45日前から解約に伴う売りが出やすい。
  • 業績悪化がなくても、カレンダー要因だけで需給が転換する局面がある。
  • クオンツ型・ロングショート型が同じ値がさ株をロングし、指数だけが偏って上昇した。
  • 為替介入は、アメリカ(FRB)の協調参加があると威力が大きく変わる。

相場を「上がった・下がった」で追うのではなく、誰がどんなルールで動いているのかという需給の構造で捉える。宮島氏の視点は、材料に一喜一憂しがちな局面ほど、冷静な判断の支えになります。

本記事は、2026年5月15日開催「宮島秀直の投資戦略ゼミ 月例レポート解説セミナー」で語られた考え方を抜粋・整理したものです。1テーマに絞っており、セミナー全体の内容は講座でご覧いただけます。

宮島秀直の投資戦略ゼミ

ヘッジファンドの需給、レバレッジ、為替介入の読み方を継続して学びたい方へ。相場を感覚ではなく構造で読み解く講座です。

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